ブロガーと「この一枚」

zeitさんに続いて便乗してみるの巻。
大元についてはverrockers.netアゥPのブログへどぞ。


で、自分が選ぶのはこの一枚。


筋肉少女帯の5thアルバム、『月光蟲』。
世間的にはやはり大槻ケンヂがVoのバンドというのが一番わかり易いんだろうか。
元PINKの岡野ハジメがプロデュースしたということでロック色が強いと言われるけれど、聴いてみるとフォークにメタル、ダウナーバラード、ウェスタン調アレンジ、歌劇、ポエミー、プログレなんでもござれとかなり音楽的幅は広いアルバムだと思う。


オーケンのボーカルが肌に合わないって人には無理かもしれないけれど。
そうでなければ、バンドサウンドが嫌いじゃないならそのアングラなイメージとは裏腹に実に聴きやすい一枚。
1曲目「風車男ルリオ」2曲目「少年、グリグリメガネを拾う」のメタル色の強いサウンドで始まり。
中盤の多様なサウンドに耳を委ねた先にたどり着く8曲目「少女の王国」の情景はひっそりと、それでいてしっかりと心に残る。
紡いだ物語を締めくくる9曲目「イワンのばか」のクライマックス感。10曲目「少女王国の崩壊」の語られぬ余韻。
アルバムとしてのいわゆる捨て曲の無さでは屈指の一枚ではなかろうか。


筋少をバンドとして眺めるのであれば、それは大槻ケンヂと如何に取っ組み合ってきたかということで。
練習のたびに「ヘタクソ!」と一番言われていたにも関わらず、筋少の揺るがぬ顔である大槻の世界をどうするか。
それはこのバンドが生まれた時から現在に至るまでの演奏勢のテーマだったのではないかと思う。


80年代のキワモノ、アングラ路線真っ只中はKeyboardの三柴江戸蔵によるアレンジワークが大槻の世界観をより多層に彩った。
三柴が離脱し、Guiter橘高文彦を迎えた90年代以降はメンバーのてんでバラバラな音楽性とバンドサウンドの厚みが世界を練り上げる方向に向かったように自分には見える。


今回選んだ『月光蟲』は90年代筋少の2枚目のアルバムになる。
筋少ファンがアルバムについて語られる時に『月光蟲』を評してよく使われるのが「最も完成度が高い」という表現なのだけど。
個人的には完成度と言うよりも、「瑞々しさ」かなぁと思う。


もっとぶっちゃけていうと、筋少のアルバムの中で一番演奏が好き放題やっていて。
筋少のアルバムの中で一番大槻のパフォーマンスがまともというかバランスがとれている気がするのだ。
こう書くとなんだか筋少アイデンティティを殺してるように聞こえるかもしれないが^^;




80年代の筋少はなんだかんだ言って大槻が圧倒的に強い。
詩にしても、世界にしても。
90年代に入ってメンバー編成が変わって、4thアルバム『サーカス団パノラマ島へ帰る』で演奏勢が「これだ!」というものを見つけて。
「おらああああああ!!!大槻往生せいやぁああああああ!!!!!」と全力で音楽でぶん殴ったのが『月光蟲』な気がする。
このくらいの気概がないと飲み込まれるんだもの。オーケンの世界ってのは。


で、これまた奇跡的なタイミングとしか言い様がないんだけど。
ちょうど大槻の歌唱がこの頃にようやくヘタウマの領域に届いたんだと思うのだ。
『月光蟲』ってアルバムは、そういう取っ組み合いの最も噛み合った時に生まれた一枚なんじゃないかなぁ。
それを自分は「瑞々しさ」と感じるのである。


その後の筋少のアルバムも好きな曲は沢山あるんだけど。
やり方がわかった分だけ、上手くさばけるようになってしまった感があって。
単なる暴力がどつきあいになり、勝負になり、試合になり、型になっていく。
完成度はどんどんあがってると思うのだ、むしろ。
でもそこで失くしていったもんもあって。
だからこそ、この一枚は特別な気がして。




もう一つ個人的な思い入れを上げさせていただくと。
自分が音楽にのめり込んだのは高校時代に部活の先輩の影響という実にベタな理由でして。
たまたま、その先輩が高校に持ってきてギター弾いてたんですよ。
で、何の気なしに聞いたんです。「先輩のギター、面白い柄ですね」って。


先輩が弾いてた水玉模様のフライングVから、自分はランディ・ローズ橘高文彦の存在を知り。
後にBLACK SABBATH筋肉少女帯に導かれ、今に至ります。
いうなれば、自分が音楽にハマる最初の一歩なんです。『月光蟲』が^^;