「じっくり語り語られてみよう」参加エントリ No.19

イベント 『じっくり語り語られてみよう』に参加し,作品について語っています.作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.他の方の語り記事一覧 → 『No.19: 【切り絵アニメ】でアイドルマスター


タカシP


【語り視点の注文】
「かくされたおはなしはなあに?」

語り手さんへ:この動画は隠されたお話を見つけて欲しがってます。
『1分18秒に出る時計』『春香の設定』からお話を探し出して下さい。


以下、アイマスの本筋に思いっきり触れていますのでご注意を。
格納。




隠されているのかどうかはわからないけれど、自分がこの話から感じたのは「素の春香TrueED」。
それ以上でもないし、それ以下でもない。


アイドルマスターを「小島麻由美」で』
この時点で既に頭を抱えたい心境だった。
歌を解釈してアイマスで表現したのではなく、アイマスを歌に表現させてみたと。
アイマスという世界における事実だと。
PVでもなければ架空のストーリーでもない。
いきなり退路を断たれたような気がした。
心が既に折れそうだった。


歌詞からイメージしたもの。
男女の組み合わせが往々にして迎える一つの境界線。
その境界線を越えるか越えないか。
その寸前のところでふわふわと漂うような印象。
歌詞にはある種の生々しさが感じられるが、実際に確定的な表現は何一つ無い。
もしここで境界線を越えたとの解釈に踏み込むならば、それは見る側の意思がそうさせたのだと。
あなたの意識がそういう結末を望んだのだと。
そんなふうに見透かされてしまうそうな。
寸止めの生殺し感。
そしてそれと相反することなく同居する、喪失感。




切り絵から読み取ったもの。
自分のハートを追いかけて、春香は扉の外に出る。
それはウトウトしていた春香の部屋の中とは全く違う、がらんとしただだっ広い世界。
とある男の差し出した手が、春香を外へと誘う。


いつものように春香が自分のハートを追いかけていくと、ハートがいつも以上に大きく反応する相手を知る。
春香はその相手と楽しいひと時を過ごす。
いつしか時間はすぎ、ふと時計を見ればそれはシンデレラが帰らなければならない時を迎えていた。
それでも、この楽しい時間を過ごしたい。
その気持ちが、春香を恥じらわせる。


ついに春香のハートは終着点を見つけた。
春香はこれまでと同じ時間が続くことを、期待していた。
期待していたけれど。




上記のとおり、自分が歌と切り絵から感じたものはだいぶ趣が異なる。
歌が連想させる男女の物語と、切り絵が見せる春香が外の世界で出会ったストーリー。
それは春香の心情とアイマスのストーリーに沿って示されたもののように思う。
その二つをつなぐのは、描いた絵の描写なのではないだろうか。
あの描写においてのみ、二つの世界はつながる気がする。
時計に示されるおとぎ話のシンデレラと、現実の女性としての自分の想いとのずれに恥じらう春香に、そう感じた。


春香のTrueEDには、多くのP、視聴者がなんらかの意味付けを、Pと春香の心情に対する解釈を付加したくなると思う。
それを間違ってるとは思わない。
けれどゲームで示されるのは、切り絵の世界が見せたものだ。
外の世界へ連れ出しながらも春香を拒否したという事実だけ。
P側の心情をくみ取ることなく、Pと別れた後の春香の心境も一切描かず。
ただただ事実だけを並べれば、春香TrueEDとはそういう話なのだと思う。


春香が歩く外の世界は眩しい光に包まれていても、空虚だ。
フラフラと歩みを進める春香の後姿は、とても悲しい。
あのシーンだけデフォルメではなく、リアルに近い華奢な少女のシルエットであることがその思いを強くさせる。
Pは春香を眩しい光あふれる外の世界へと連れ出した。
しかし春香が最後に望んだのはPのそばに置いてもらうことだった。
そんな春香が最も望んだことだけが叶わない、幸福な結末。
アイマスにおいて、春香が「アイドル」を最も突き詰めたキャラクターであるからこそ、この結末はある。


正直に言うと、視聴者としてこれを見るのはしんどい。
上のような解釈で見るならなおのこと。
タカシPがこの作品で視聴者に伝えたかったこと。
それが、わからずにいる。


ただ、今回こうして書かせていただく機会を得たことで、考えてみたくなったことがある。
自分はこれまでアイマスのストーリーに自分好みの解釈を付け加えすぎていなかったか、と。
それはそれであってもいいと思うけど。全てではない。
事実を事実として一度確認することで、改めて「天海春香」と向き合ったなら。
そこから見えてくるものもあるのかもしれない。


いつか、そんなふうにこの作品を、また見返したいと思う。