積み上げるということ

赤ペンP
アイドルマスター いつまでも、やさしい気持ちで。
アイドルマスター いつまでも、やさしい気持ちで。


「赤ペンPの必殺技は、一瞬たりとも途切れることなく積めること」


昔自分が書いた、そんな言葉を思い出した。
動画を再生し始めてから観終えるまで。そこにある画も、音も、想いも。
何一つ後ろに流すことなく。零れ落ちることなく。
全てを積んで、観せる動画。それが赤ペンPの作風だと思う。


あずささん誕生祭を巡り始めてこの動画を観たとき、思わず「参りました」とつぶやいた。
俺の中のあずささん担当Pに、はっきりと赤ペンPの姿が見えてしまったのだから。
花のアクセサリで積み上げられた、3年に渡るあずささんとの日々を前に何が言えようか。


おめでとう!だけでもない。好きだー!だけでもない。
「一人きりじゃたどり着けないから」
そこにはとても静かに、そして温かく。それでいて揺ぎ無く。
共に歩んできたあずささんを祝福する姿があった。


そして最後に、あずささんへ向けて3年かけて積み上げてきたものを一度取り払って。
あずささん自身の想いを、そっと問いかける。
こんな大人な愛情表現を見てたら、降参するしかなかったのだ。


しかも、それだけじゃなかったのである。
これに対するあずささんの返事ときたら、これだもの。


アイドルマスター あなたと出逢えて、うんと幸せ。
アイドルマスター あなたと出逢えて、うんと幸せ。


「3年間だけじゃないですよ」
「あなたと出逢うずっと前から。しわくちゃのおばあちゃんになるまで」
「私の全部を、受け止めてくれました」
「ずっとずっと、いっしょですよ」
「めいっぱい、幸せにしてくださいね?」


こんな返事もらって、幸せにならない男がいるだろうか。
傍から見てるだけの自分ですら、幸せになっちまうくらい。
最高の返答が、そこにあった。
そこにいたのは、1年間をプロデューサーと駆け抜けたあずささんではなく。
3年間を赤ペンPと過ごした、二十歳のあずささんだと思う。
この光景に到るまでに、そのくらいの長さが、積み重ねが必要だったはずだから。


そして、物語は次の頁へと続く。


アイドルマスター 春香・あずさ・千早 「今を信じて」
アイドルマスター 春香・あずさ・千早 「今を信じて」


これは3周年作品であって、誕生祭作品とは直接は繋がってないかもしれない。
それでも、自分の中ではなんとなく繋がっているような気がする。


最初は運命の人を見つけるために、アイドルになったかもしれない。
でも、3年間積み上げたものがあったなら。
あずささんに見えてくる世界もまた変わってくるんじゃなかろうか。
アイドルという生き方を、そして765プロという場所をかけがえのないものに思うのなら。
あずささんは引退するのではなくて、アイドルを続けるという未来を選びそうな気がした。
そして、ここにある景色はまさにその未来なんじゃないかなと。
自分の選択した、「今」を信じたのかなと。


そして、赤ペンPの処女作に贈ったのと全く同じ感想を抱いたのである。
「隅々まで自分のできることにきっちり手を尽くした、実にいい作品だなぁ」と。