千早語り その1 〜千早のこれまで〜


不器用だなぁ。


千早の印象を一言で表すならば、やはりこの一言に帰結する。
それは一つは、その環境ゆえに、心を閉ざしたからの不器用さ。
もう一つは最強の武器で全てを突破してきたからの不器用さ。
どちらの意味でも、見ていてとても危うく、じれったくなる。


千早の半生。
それをどうこういうつもりは実はあまりない。
それは、あり得ることなのだから。
そして、千早に起こってしまった出来事なのだから。
その結果は、誰がなんと言おうと、どうにか自分で引き受けるしかないのだ。
両親に余裕がなかったことは確かに事態を悪化させたのだろうけれど。
それとて、特別なことではない。
そこで笑顔でい続けることができなかったことそれ自体は、千早の本質なのではないかと思う。
独りを寂しいと思いながらも、独りでいることしか選べない。
そんな千早。


その歪みは、千早のもう一つの面を覚醒させる契機となったのだろう。
千早の持つ最強の才能、歌。
千早はそれだけを片手に、自分の居場所を切り開いた。
我流で、ただただ愚直に自分の才能を磨いた。
自らを歌と同一視するほどに。
己が存在を単純化し続けた。
そんな千早。


書いているだけで、やるせなくなる。
でもそれは、千早なりに精一杯に生きてきた上での選択であって。
可哀想とか、頑張ったとか、そういう言葉でひとまとめに断じてしまいたくないとも思う。
ただ、そういう事実があったのだと。
そんな時を経て、今千早はここにいるのだと。
その事実だけを。真っ直ぐに、正直に。
心に刻んで、隣にいたい。


そんな自分なりの思いを再確認した上で。
アイドルマスターという無限の箱庭から生まれたそれぞれのPの物語にふれていこうと思う。