駆け抜けた物語、始まらなかった物語

久しぶりに、妄想炸裂。


時雨P


本当に、まったく。
美希といい春香といいこの伊織といい。
どうしてこう時雨Pは余すところなくその存在を鮮明に焼き付けられるのだろう。


でも、伊織に向ける眼差しからは、少しだけ違うものを感じる。
ほんの少しだけなんだけど。春香といる時よりも、美希といる時よりも。
なんとなく千早といる時に近いような。


そこにいる伊織はまごうことなきアイドルで。そして素敵な少女で。
伊織の表情が喜怒哀楽どの方向にも豊かであるからこそ、ああ、いいパートナーなんだなぁと素直に思う。


でも、ステージの伊織に贈る言葉は、「GOOD BYE」なんだよね。
そしてそれは、二人とも同じ思いなのだと思う。
二人はお互いを心の視界に捉えていたけれど。
アイドルへの道を駆け昇っていく中で、最接近したのだけれど。
でも、交わらなかった。
二人はすれ違い、それぞれの道をこれからも歩き続ける。


伊織の選択が、すごく心に響く。
ああ、伊織は伊織だからこそ。自分の中にあった気持ちを、始めることもなく閉じ込めたのだ。
それが恋と呼べるような確かなものだったのかはわからない。
それでも。それが思い出すと疼く小さな傷になるとわかっていようとも。
顔をあげて、まっすぐ前を向いて、交わらずに自分の道を行くだろう。
伊織には、目指す道があるのだから。
その道に、彼はいないのだから。


こんなにも、伊織を美しく、凛々しいと思ったのはいつ以来だろう。
昔、自分の欲しいと思った物を自分でつかむといった少女は、自分の意思でほしいものを遠ざけた。
ほんのひと時、手に入れることすらなく。
最後の最後に、届かぬつぶやきを残しただけで。
その決断とステージの笑顔に、伊織を伊織たらしめる誇り高き意思を感じるのだ。




そしてそこまで見た時に。
作者コメに、馬鹿正直で残酷だけれど、優しい思いを感じるのだ。