傷痕

ファランP
(MADPV) 『 So What 〜さよならプロデューサーズ〜 』
(MADPV) 『 So What 〜さよならプロデューサーズ〜 』


2次元の彼女たちと、街ですれ違う人たちとの間に違いなど存在しない。


少なくとも自分はそう思う。
自分から見える「概念」として、それらは等価である。
そこに重みの差を与えるのは、こちらの思い込みの多寡だ。


だから自分は、彼女たちを人間として考えることに違和感が全くない。
彼女たちに笑ってほしいと思うし、嫌がるであろうことはしたくない。
普段触れ合う人たちと同じように。それこそ当たり前に。


そんな彼女たちが贈るサヨナラは、こんなにもカッコよかった。
強気な音と歌にも関わらず、視線をサングラスやHMDで隠し、背中を向ける彼女たちの心情を思った。


彼女たちから見たニコマスにだって、こういった心情があるのだと思う。
鏡の向こうから見た世界。


だから、ここに描かれたのは、彼女たちの青春の傷痕。
自分にはそう思えるのだ。


たくさんの傷を抱えて、彼女たちはこれからも歩いていく。
その傷は時に思い出したように疼くだろう。
時に忘れられない大切な思い出になるだろう。
でも、傷ひとつない人生なんてつまらないものだ。
磨くってのは、最高の輝きのために小さな傷を少しずつ積み重ねることだ。


彼女たちの後ろに流れるのは。
そんな最高の傷痕たちなのだと思う。


大好きな人にサヨナラを。
背筋を伸ばして。
笑顔で"So What"って叩きつけてあげる。
歯をくいしばるのも、鼻の奥にツンとくる感情も、胸に抱えて。
たまには貴方にもらった傷を思い出すよ。
貴方に私の傷はあるのかな。
そんなこと絶対言葉にしてやらないけど。




彼女たちは、ステージの上で輝く。
たくさんの傷は、彼女たちを照らす光を乱反射し、さらなる煌めきを産むだろう。
それが彼女たちがそこにいる証。


それはメタでも何でもない、当たり前のこと。
生きるって、そういうもんなんだよ。