「じっくり語り語られてみよう」参加エントリ No.16


イベント 『じっくり語り語られてみよう』に参加し,作品について語っています.作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.他の方の語り記事一覧 → 『No.16: 伊織と千早と蒼い鳥


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【語り視点の注文】
コース1
この動画には背景があって、それはショートストーリー(以下SS)という形で用意されています。
動画はSSを読まなくとも楽しめるようにはつくりました。
SSを読む前と後で、動画に対する印象は変わったでしょうか?
SSを先に読まれた方は、動画に対してどんな印象を持たれたでしょうか?


コース2
フェードアウトするこの動画のラストには、当初セリフが入っていました。
見た後の余韻を残すため、アップした最終バージョンはそのセリフをカットしてあります。
もしここにセリフを入れるとしたら、どんなセリフを入れたいと思いますか?
伊織のセリフ? 千早のセリフ? あるいは二人のセリフ?
SSを読む必要は全くありません。動画がから感じた印象だけでも十分です。
そのセリフと、そのセリフを入れたいと思った理由を教えてください。




自分はSSの1話目だけ読んでいた。
その後この作品を見てから、SSが続いてるのを知って全部読んだ。
いささか変則的な状況だけにどう語ればいいのか判断に悩んでる。


まあ、いつもどおり書くだけか。
以下、格納。




出だしを読み、途中が抜けて、結末を見た。
なので、この作品に至る過程がわからない。
そういう意味では、SSを読んでないという感覚でいいのかなと思う。


初見の感想は、「惜しい」だった。
ぐいぐい引き込まれたのだけど、追い切れなかった字がとても気になる。
しかも、その字は概念としての演出ではなくて、読む必要がある演出に見えた。
読める部分に意図がある。説明がなされている。なのに追い付かない。
絵として作品は認識したけれど、意として理解できてない。
これほどの絵を見せてくれているのに。
それがすごく引っ掛かった。


まずはそこでSSを読んでみる。
何となく拾えた単語の背景が見えてくる。
次にもう一度通しで見てみる。
元々1話目は読んでいたのでなんとなく舞台上のやり取りや力関係はわかっていた。
その後のストーリーで膨らんだ世界を知る。そういうことなのか。
ようやく意が見えてきた。
最後に一時停止して文字を確認する。
そして、全体を認識した。


敢えて、動画の具体的な中身を語ることはやめておこうと思う。
この作品にはSSという具体的な背景が語られているし、作品自体の中にも表に見えるものはすべてある。
語るべきは注文のとおり、印象。
であるならば、「若き鳥の飛翔」というのが最も適切な気がする。
互いの価値観を相容れず、否定し、ぶつかり、磨き合い、そして遥か高みへ。
雛が空を得るその瞬間、自分の今まで見えてなかった世界を垣間見るその瞬間のような。
そんな輝きを感じた。


うん、やっぱりこの作品、単体でも凄さはわかるけど、単体で終われる作品ではないと思う。
ステージ上の構成も、二人のやり取りの流れも、見せ場のタメも、歌い出しの工夫も素晴らしかった。
8bit音のステージで息をのませる作品なんてそうそうあるもんじゃない。
だからこそ、できることなら、こういう手順を踏まずに納得したかった。
見事ゆえに、かえって画竜点睛の一点が大きく見えてしまう作品だと思う。


結果としてはSSを読んでも最初見た時の印象から変わりはなかった。
それはSSなしでも絵で十分見る者の意識を根こそぎ持っていく凄味があるから。
一番肝心なところは確かに絵で伝えてきていた。
SSはそれを深いものにしてくれたし、印象の根拠となる世界を見せてくれるものだったと思う。




最後のセリフを自分が入れるなら、


千早:「いいステージだったわね」
伊織:「千早もなかなかよかったわよ」


あたりだろうか。ちと長い気もするが。
互いに自分の譲れないところには触れずに、それぞれの言い方で誉めるんじゃないだろうか。
それは自分の領域へのプライドと、飛べたことの達成感の両方を感じているだろうから。


個人的には、二人ともまだ本当の意味では飛べていないと思う。
なにせまだ低レベルの話なのだ。
若鳥なりに飛べたという達成感はあるだろうが、まだまだ空は高く、広い。
だからこそ、千早はこのステージでの「歌」については言葉にしないだろうし、
伊織はこのステージで「魅せた」ことについて触れないだろう。
そのプライドは、さらに高く、遠く飛ぶために必要なものだと直感的に感じているだろうから。