「じっくり語り語られてみよう」参加エントリ No.17

イベント 『じっくり語り語られてみよう』に参加し,作品について語っています.作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.他の方の語り記事一覧 → 『No.17: 真 手描き「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」


書店P


【語り視点の注文】
どのぐらい動画として見れるか(絵の羅列になりすぎてないかどうか)。
真の普段の魅力とは違うものを詰め込んでみたけどどうでしょう。


そして、もし思いついたら、ここからどんなストーリーを想像できるかを書いてほしい。




この企画でもう一度向き合うことになるとは嬉しい誤算。
初見の感想はコチラ
語り視点のお題がなかったらこれ以上の言葉は紡げなかった気がする。
この企画、ホント楽しい。毎回のたうちながら書いてるけどw
では早速。以下格納。




・動画として
少なくともこの作品は絵の羅列とは思わない。
羅列というのは文脈のない時に使われる言葉だと思うので。
かといって挿絵のような場面を切り取った表現ではなく、歌とつながっているし、絵と絵の流れに明確なストーリーがある。
動画か静止画かを問わず、何かを物語る、伝えるものは個々の羅列ではなく全体で一つの作品だと感じた。


それを踏まえた上で、動画かと言われたら、自分の中では静止画MADになる、かなぁ。
それはたぶん自分にとってこの作品の画が、一枚絵としてより魅力的だから。
絵として認識して、自分の脳内で空間をイメージとして動かしたくなる。
動画としてこの作品を見ると、真の唇に目が吸い寄せられてしまって、全体が見えなくなる。
それをもったいないと思ってしまうほどに、全体の画が好き。
だからこれは動画じゃなくて静止画としてしっくりきた。
決して悪い意味ではない。絵としていいからこそ、動画として認識できない。それだけの話。


・真の魅せ方について
「普段の魅力とは違う」という言葉の意味がアイドルとしての魅力と違う部分、という意味ならすごく綺麗に表現されてると思う。
個人的には周りの真士な方々の薫陶のおかげで、真の魅力について多くの面があることを学んでいるので。
「ああ、真らしいなぁ」と思ってしまう為、あまり参考になれない。
そうだなぁ。やっぱり初見のときに書いたとおり、「等身大の真」だと思う。
観てるこっちもファンとしてじゃなくて、ただの一人の人間として、心に響いた。








さて、ここからが問題だ。


わた○○祭の時や、先日のえびP作品のじっ語で証明済みの通り、暴走させたら歯止めが利かない人間なんですけど。
「どんなストーリーを想像できるか」なんて言われたら、書かないわけにいかないじゃないかw
初見じゃわからなかったけど、この一言で妄想炸裂してしまったので以下に公開。




注意
特に問題がある内容ではないと思うけど、人によっては強い違和感を感じる可能性もあるので
その点ご理解のうえで、気が向いたら読んでいただければ幸いです。






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「うわぁ…」


抜けるような空。
空を見上げるなんて、いつ以来だろう。
視線がどこにもぶつからずに、あの青の中に溶けていく。


「今頃、みんなどうしてるのかな…」


日差しの強さに思わずかざした手の平に、胸がチクリと痛む。
まだ、ほんのわずか残ってる気がする、重ねた手の温もり。
もう2ヶ月も前のことなのに。
太陽の熱に消えてしまう気がして、思わず震える手を日差しから隠した。


アイドルを引退してからというもの、何をする気にもなれなかった。
プロデューサーと走り抜けた1年。
届かなかった夢。
その反動がきたのかもしれない。
周りの目さえも、重く感じて。
見知らぬ土地へ旅に出た。


どこまでも続く草原。
電車が通る気配すらない線路。
お気に入りの白のワンピースを着て、あてもなく歩いた。
夏の景色は綺麗だけれど、どこか虚ろに思えるのは見ている自分の心が映ってるからかもしれない。


「…誰もいないし、いいよね?」


誰に聞くともなく呟いて、鼻歌を歌ってみる。
聴きとめる人影などどこにも見えない。
沈んだ気持ちのままでいるのも嫌だったので、少し大きめの声で歌ってみた。


「あ…」


歌声が、空に吸い込まれていく。
また空を見上げてみた。
果てがない、あの空のように届かなかった夢。
今もプロデューサーは、きっと追いかけているに違いない。
ボクとではつかめなかった、あの空を。


歌声は続いていく。
ステージで歌った歌。
みんなで歌った歌。
聴くだけだった他のアイドル達の歌も歌ってみた。
ファンのみんなに届ける歌も気持ち良かったけれど、ただ歌いたいから歌うのも悪くない。
思いつくままに歌い続ける。


「この歌…」


気づけば、歌はいつしかラストステージで歌ったあの曲になっていた。
優しくて、切ない。でも力強いバラード。
自分にはちょっと似合わないかも知れない、なんて思ってた。
「服と一緒だよ。そのうち真にも似合うようになるさ。」
なんてプロデューサーは言ってたっけ。
子供扱いしないでください!って言い返したけど、プロデューサー笑顔で謝ってたなぁ…。


もう一度、歌う。
夏の空気がそうさせるのか。
歌詞が、体に沁み込んでくる。


「そっか。アイドルを引退したから、やる気がなくなったんじゃないんだ。」
「プロデューサーとお別れしたから、気力が出なくて、引退したんだ。」


プロデューサーの言ったとおりだった。
今になってようやく「別れ」を知った。
あの時、気づけていたら。
届かなかった夢に、届いたのだろうか。


歌声は続く。
何度も、何度も。
ファンのためではない、自分に聞かせるための歌を。
あの夢を追い続ける人への歌を。


「プロデューサー…逢いたいよぉ…」


知らぬ間に、真の視界は滲んでいた。
頬を伝う涙をぬぐいもせず、歌い続ける。
こんなにもあふれる想いに、なぜ今まで気づかなかったのだろう。
逢いたい。
あの温もりにもう一度触れたい。
その想いを。ようやく知ったその想いを込めて。歌い続ける。







終われない。
この手に残る温もりを、まだ忘れてはいない。
お別れの意味を知った今だからこそ。
逢いに行こう。
もう一度、夢を目指そう。
プロデューサーとなら、きっと届く。あの雲の向こうの、空にだって。





その時、部屋の片隅では真の携帯にメールが届いたところだった。


「真、元気か?…………」

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