「じっくり語り語られてみよう」参加エントリ No.22

イベント 『じっくり語り語られてみよう』に参加し,作品について語っています.作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.他の方の語り記事一覧 → 『No.22: 春香 Catch Up Dream!


DricasP


【語り視点の注文】
「君」とはいったい何なのでしょう?

この作品は、春香のAランクアップコミュからエンディングに向かうストーリーを表現しています。
そして、私なりに考えた「なぜ、春香は他のアイドルと違ってあのようなエンディングなのか」という回答を出してみた作品でもあります。
その中で重要となるキーワードが、歌詞の中で何回も出てくる「君」という単語です。
「君」とはいったい何のことを指しているのでしょうか?
そして、「君」は何なのかということを踏まえて、この作品の感想をお願いします。

もちろん、私の考えと違う「君」だとしてもかまいません。
この作品を見て感じた「君」を教えてください。




いよいよこの企画参加エントリも最後。
最後まで、自分の語りを。
今はただそれだけができることだと思うので。
精一杯書かせていただきます。
以下、格納。






作品を見たときに最初に感じたのは、順番が語り視点の注文と違うことだった。
「Aランクアップコミュからエンディングに向かうストーリー」
表現されているものはその通りだ。
でも作品の時間の流れは違う。
活動停止を告げるシーンに始まり、プロデューサーとの別れのシーンで終わる。
プロデューサーとの会話は、ラストコンサートの舞台で春香が回想しているシーンに思える。
時間軸としてはお別れコンサートの舞台で歌っているところから、最後の別れのシーンまでが作品内の実時間。


「君」とは何のことを指すのか。
「懐かしい君」
「君を忘れたままで」
「君とまた手をつないだら」
自分が一番印象深かったのは、字幕も表示される最後の「君」
また手をつないだら。
離れた手を、再びつないだら。
じゃあ、最初につないだのはいつ?


ここで思い出したのが、春香との最初の出会いのシーン。
「運命の出会いを信じてる?」
ああ、あの時なのか。


Aランクアップコミュで歌がずっと好きな自分を思い出した。
トップアイドルになり、自分の根っこの部分を思い出し。
春香はまさに順風満帆のときに、作品冒頭の活動停止の話を聞く。
春香が忘れていた君。
また手をつなぎたい君。
それは、ほかならぬプロデューサーなのではないだろうか。


ただ歌が好きなだけの彼女がトップアイドルになるまで走り続けさせてくれた人。
失いかけていた歌が好きな自分を再認識させてくれた人。
それはずっと一緒にいるプロデューサーだった。
あまりにも一緒にいすぎたから。
当たり前のことになってしまって。
「運命の出会い」だったことを、忘れてしまっていたのではないだろうか。


お別れコンサートの舞台に立つ春香の表情に迷いはない。
とても可愛くて、親しみがあって、最高の笑顔で歌う春香。


「君とまた手をつないだら どんなに高い壁でも乗り越えられる」


それは春香の希望であり、確信している「運命」。
もう一度出会える可能性を信じているからこそ、春香はアイドルを続けてゆく。
春香は出会った時の普段着の姿に戻り、お別れコンサートの舞台は幕を閉じる。



もう一度プロデューサーと手をつないで、トップアイドルへの壁を乗り越えていくこと。
それはお別れのシーンで春香がプロデューサーに贈る宣言であり。
ゲームとしてはまた春香と52週を走り抜けることになる。


自分もニコマスに長く触れてきた以上、春香のエンディングについては幾度も思いを巡らせた。
個人的に思うところもある。
どちらかというとやり切れない思い。
でも、この作品を見たら、そう鬱屈することもないのかもなぁと思った。
「運命の出会い」が存在するのは春香だけだ。
この作品の最後の春香のプロデューサーへの感謝の言葉を受けて、どうするのかはプロデューサー次第である。
アイマスの世界の続きを思うなら、時を経て、「運命の出会い」の意味を確かめることもあるだろう。
ゲームでいうなら何のことはない。電源を入れればそこには「運命の出会い」が待っている。


個人的にはこれを「結末」と呼んでいいものなのかどうか、ちょっと迷うところだ。
終わりのない物語。
ある種の輪廻思想のようなもの。
それはゲームという媒体によって、われわれと異なった時間軸を構築可能だからこそなし得る「運命」。
そんな気がする。


この解釈において、いわゆる春香のTrueEndはどういう意味合いになるのか。
アイドルマスターの主人公によるトップアイドル実現後のエンディング。
それはアイドルマスターという世界の幾重にも重なる運命の輪から外れることになるのだと思う。
だから春香は「アイドルをやめた」時、すなわちもう一度まっさらの状態で戻ってくる。
その先にあるのが春香とプロデューサーの関係性を物語る別のストーリーなのか。
それともまたゼロから大きな運命の輪を走り続けるのか。
それもまた、プロデューサー次第なのだろう。


「君」とは「運命の出会い」をしたプロデューサーのこと。
そして春香のエンディングが特別な理由。
それは他のアイドルの直線状のストーリーではなく。
我々と別の時間軸が織りなす「運命」を託されたアイドルだから。
それが自分なりのこの作品への解釈です。




自分で解釈しておいて言うのもなんだけど。
この解釈の衝撃を、うまく受け止められない自分がいる。
印象に強く残っているのは、春香さんの笑顔。
今まで春香さんのエンディングを考えたときに、脳裏に心からの笑顔を見せる春香さんはいなかった。
だから、今は笑顔を思い浮かべられることがただうれしい。


妄想が暴走した結果であったとしても。
春香さんの笑顔を自分の心に残してくれた。
そんな素敵な作品を送り出してくれて、本当にありがとうございます。