千早語り その4 〜千早とのこれから〜

かわづP

これほど千早の半生に突き刺さる曲がボカロにあるとは知らなかった。
でも、この歌を「パフォーマンス」として千早は歌えている。
それは最後のシーンがあるからなのだろうか。
それが千早の答えなのだろうか。


三浦勇士P

アイドルになる前の千早の手紙は、「苦しい」と言った。
一年後の千早は、苦しみに替わり、信じることと夢の船を手に生きている。
そして、一年前の自分の苦しみを、肯定できるのだと思う。
今があるから。


歌を生きるための最低限を維持する武器から、夢をかなえる方法への変えられたこと。
それが一番の変化だったのだろう。
その為には仲間が、プロデューサーが、765プロが千早には必要だった。
歌わなくても、千早を認めてくれる人がいることが。


歯ブラシP

魔汁P

方向性は全く違う両作品。
ただ、ものすごく千早が安定している作品だなと両方ともに感じた。
歯ブラシPが引きだした千早の可愛いステージングも見事なら、魔汁Pの見せる硬質な格好よさも天晴れ。
一年の時を得て、確実に千早はアイドルとして成長した。
両作品の千早は間違いなくトップアイドルのパフォーマンスにふさわしいと思う。
ここにたどりつくまでに積み重ねたものをとても大切だと思うし、これからも大切にしたい。
それでも、どこか引っ掛かりを感じるのだ。
今までの一点突破の一撃ではなくて、バランスが取れた上でのパフォーマンス。
そんな印象を理屈ではなく感じるのである。


そしてそれは、千早が最初の頃に持っていた切れ味を失っている、という意味でもある。
その違和感を確信させたのは、ぷげらっちょPの、おそらく今後も長く語り継がれるであろう名作だった。


ぷげらっちょP

ああ、千早の比翼は歌なんだ。
それが見終わった時の確信に近い感想だった。
蒼と月と千早の世界。
その素晴らしさに見入りつつも、自分の中ではこれは「千早と歌だけの世界」だと思った。
この世界に自分は触れられない。
この突き詰めた領域こそが、千早の真骨頂。




千早の生き方はとても息苦しそうで。
危なっかしくて。
どうにかして、安らげる場所があることを伝えたいと思った。
そして千早は765プロでそれを見つけた。
でも、その結果として彼女は才能の矛先を丸めてしまうのではないだろうか。
息苦しさからの解放とは、安らぐことではなく突き抜けることでも得られるのではないだろうか。
そんなことを、悩んでいる。


えびP

全てが枯れ果てた世界にあって尚、千早の意思はその火炎を絶やすことはない。
生の果てで、境界の刃の上に凛々しく立つその姿に、ただただ見惚れた。
それでいいのだ。
歌とともにある限り、千早にはその可能性がある。
それを遮る意思を、自分は持たない。


だから。
彼女が心おきなく飛べるように。
時に嵐で前に進めず、方角を見失ったときのために。
自分は彼女が翼を休めるための、大海の木片となろう。
雨の日には風雨をしのぐための老木となろう。


それは、一人の女性としての千早を幸せにする答えではないかもしれない。
EDの約束を考えれば、選んではいけない選択なのかもしれない。
でも、それでも。
これまで千早を見守ってきた結果として、Pとして結論を下すのであれば。
今の自分には他の答えが見つからない。
千早が比翼にPを選んだら。
彼女は観客へ、ファンへ向かって歌を贈り続けられるのだろうか。
あの不器用で、まっすぐで、危なっかしい少女は、Pのために歌ってしまうのではないだろうか。
脳裏に浮かぶのは、もう一人のトップアイドルへの道を歩んだ少女の面影。
そう、我々は春香EDを知っている。
これは根源的には、同じ問いなのではないだろうか。


今の時点の結論が絶対に正しいとは思わない。
もちろん答えはPによってさまざまだと思うし。
自分自身だってこれから変わる可能性はある。
それはアイマスニコマスと、自分の時間のねじれがあるから。
物語は何度でも再構築できる。
それが幸福なことなのかどうかはわからないけれど。


だからこれからもたくさんのニコマス作品で千早を見守っていきたい。
そしてPとしても別の場所で、千早と歩き続けたい。
その結果、答えが同じであろうとも、変わろうとも。
自分にとって大切な人であるからこそ。
あらゆる可能性を模索し続けたいし、見届けたいと思う。


いつか、自分のPとしての物語にも終わりが来るかもしれない。
こないかも知れない。
でも、その時記憶に残る千早の表情が。
心からの笑顔であればと。 ただ、それだけを願う。