満たされないがゆえの幸福
少年P トカチP DSP
【アイドルマスター】糸電話 天海春香
本作を見たら、ぜひもう一度こちらも観てほしいなぁと思う。
途中の展開など、明らかにこちらを踏まえた世界があるので。ぜひ。
アイドルマスター さよならメモリーズ 天海春香 【高画質版】
無印とアイマス2は平行世界である。
そんなもんは百も承知で。
平行世界が許されるなら飛び越えるのも勝手だろうよ。
そんなふうに、真正面から打ち返した一作だなぁと思うのだ。
そしてそれはむしろアイドルマスターを広く概念として考えるときに、
あってしかるべき視界なのだと思う。
無印の世界から繋がった一本の電話は、春香に何を与え、何を奪ったのだろう。
以下、個人的解釈をつらつらと。
時や場所を越えて、心の奥が覚えている光景。
砕け散る思い出たち。
紙コップは残酷にも、現実を濾過して甘い夢を春香に届けてしまった。
春香だけが無いものねだりをしたわけではないのだけれど。
あれほどに望んだ声は、もう聞き取れないほどに遠く。
「春香は一人でも大丈夫だから」
その言葉は、決して突き放すための言葉ではなかったのだと思う。
でも、それは目の前にいる春香の心を支えるものではなくて。
どんな声もちゃんと聞こえていたはずなのに。
あまりの近さに糸は緩み、互いの声を遠ざけてしまった。
ほんの少し距離が違えば、まだ伝わったかもしれないけれど。
それは追いかけるには遅すぎて。
少しだけ違う世界で、春香は一人ではなく、三人で歩いた。
それは別の形でもう一度出会えたPなりの、あの時できなかった何かなのかもしれない。
途切れてしまった赤い糸を小指に結ぶ春香には、恨みも悲しみもなく。
遠く、とてつもなく遠くから、ようやく届いた言葉。
糸は既に切れてしまったけれど、アイドルマスターという世界が結び直してくれたから、伝わる言葉。
一本の糸ではなくなってしまったけれど。
もう引き止める術は持たぬ糸だけれど。
だからこそ伝わるものがある。
紙コップは、喜びも悲しみもメモリーとして濾過してくれた。
濁った景色の向こうに、光はあった。
伝わってきた言葉は相変わらず不十分だけれど。
今なら、その不十分さが必要なときもあるのだと笑うこともできる。
だから春香は。
やはり、幸福なのだと思う。