愛を込めて歌うということ

itachiP

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS MADPV S(mile)ING! -Song Of You-


この動画は間違いなく島村さんに捧げる動画なのだけれど。
これほどに渋谷凛を痛切に描いた動画もないだろう、と思った。


卯月をあの公園に連れて行き、問い詰め、吐き出させたのは確かに渋谷凛の役目で。
でも本当に伝えたかった言の葉は、こっちだったのだと思う。
ただ、あの時に卯月に届く言葉はこちらではなかったから、ああなっただけ。
計算なんて出来るような奴でもないので、まっすぐに体当りした結果なんだろうけど。
本当に損な性分だと思うし、それをわかってくれる仲間でよかったなぁと思う。


「Shoot! 決めるしかない」
「やり過ぎなんてない」
どちらかと言えば、卯月よりも凛に似合う言葉だよなと思う。
こんなにも凛の歌だっけ、と思った。
初めて聴いた時になんだか凛が泣いてるみたいだ、と感じたのを思い出した。
どこまでも自分の思いに賭ける歌声。


それでも、私は嫌なんだと愛を叫ぶ。
力強く、それでいて透明感すら帯びさせて歌い上げる凛の歌は、純然たるエゴだ。
とてもとても美しい、彼女のエゴだ。
「あなたが逃げることに、目を背けることに、私が耐えられないのだ」と。
ああ、それでいい。そう思った。
おまえさんは我慢してるより怒ってる方がずっと輝いてる。
そして怒ってるより歌ってる方がもっと相応しい。


アイドルマスターってのは不思議なもんで。
アイドルの才能に自信持ってる奴なんてほとんどいない。
シンデレラガールズでも、中心のメンバーになればなるほどそうだ。
自分はいつかトップをとるんだと根拠の無い自信に満ち溢れてるほうが珍しい。
むしろ劣等感をもってるアイドルのほうが多いくらいだ。
シンデレラプロジェクトも、プロジェクトクローネもそうだ。
それでも、やるしかなかったんだ。やり過ぎなんてないんだ。夢を見るんだ。


決めどころに気持よく気合の入ったステージ。
サマフェスの思い出。クローネの仲間たち。
誰ひとりとして諦めない、小さなこだわり。
そして両手を握りしめて、トライアドのステージをずっと観ていた卯月。
そこにあるのは、どうしても譲れない彼女たちの生き様。


島村卯月と、渋谷凛に違いなんてなかったんだ。
状況が明暗を分けたに過ぎない。
渋谷凛だって、何かを持ってるわけじゃない。
というよりもむしろ彼女が持っているのは、憧れだけだ。


卯月の悩みは卯月にしかわからないかもしれない。
凛に重荷を分かち合えるのかなんて、わからない。
違いなんてなかったのに、違ってしまった。
それでも舞台の上にしか答えはないから。
彼女は精一杯に誓いの言葉を歌う。
違いなんてなかった二人だからこそ。
あなたの歌を、あなたへ投げかける。


思いは届くと信じて放つ、とても身勝手で、とても真摯な歌。




シンデレラプロジェクトが終わり、それぞれがそれぞれの道を歩く遠くない未来。
もしニュージェネレーションズが別々に活動していたとしても。
渋谷凛はこんなふうに歌い続けるだろう。
島村卯月はこんなふうに笑うだろう。
そして互いの思いは、夜空を駆けるだろう。
そんなifを考えたのは、多分アニメの絵とゲームの画が産んだちょっとした錯覚。


島村卯月は、渋谷凛のアイドルだ。
そして俺にとっても、やっぱりアイドルだった。